犬の手作りご飯のレシピを検索すると、「手作りはよくない」という言葉が出てきます。
作ってあげたい気持ちはあるのに、その一言で手が止まってしまう飼い主さんは少なくありません。
先に結論をお伝えします。
食事から水分をとれる手作りごはんは、わんちゃんの毎日の食事を整えるうえで心強い方法です。
この記事は、犬の管理栄養士としてマンマボーノの料理教室をひらき、5,000頭以上の犬猫の食事相談に対応してきた経験をもとに書いています。
なぜ、犬の手作りご飯で水分をとることが大切なのか
近年の栄養学では、6大栄養素のなかで水がもっとも重要だと説かれています。
水がなければ栄養は身体をめぐらず、不要なものも排出できないという考え方からです。
水分が足りない状態が続くと、体液の粘性が高くなり、血液やリンパの流れが滞りやすくなると考えられています。
栄養素の運搬や老廃物の排出も、水分が足りなければうまく進みません。
十分に水分をとることは、代謝や健康維持の土台になります。
総合栄養食のドライフードは、水分が約9%しかありません。
だからこそ、食事そのものから水分をとれる形に意味があります。
「犬の手作りご飯はよくない」と言われる3つの理由
犬の手作りご飯を調べると出てくる「よくない」という意見は、次の3つに整理できます。
- 栄養バランスが崩れやすい
- 続けるのが難しい
- 食材の選び方に知識がいる
この3つを知らないまま自己流で始めると、食べてくれるようにはなったけれど便の状態が変わってしまうことがあります。
そこで「やっぱりよくなかったのかもしれない」と感じてしまう方も多いのです。
理由1 栄養バランスが崩れやすい
手作りご飯で最初につまずきやすいのが、栄養バランスです。
総合栄養食は、名前のとおり総合的に栄養が整っていることを示す区分だからです。
AAFCO(米国飼料検査官協会)の定義では、水とそのフードだけで犬や猫の健康を維持できる基準を満たしたものを指します。
日本でもペットフード公正取引協議会が採用している基準です。
同じ基準を手作りごはんで満たそうとすると、これは大変な作業になります。
とはいえ、われわれ人間も毎日総合栄養食の基準どおりのごはんを食べているわけではありません。
マンマボーノでお伝えしているのは、総合栄養食のドライフードに簡単な手作りごはんをトッピングする形です。
栄養成分はフードが担い、そのうえで上手に水分をとれるごはんになります。
理由2 続けるのが難しい
2つ目の理由は、続けることの難しさです。
手作りご飯は、買い物から下ごしらえ、加熱、冷ますところまでが一続きの作業だからです。
日々の食事を考えて作るのは、人の分でも負担が大きいと感じます。
教室を始めた当初は、見栄えのする料理を作っていました。
「素敵なごはん」「よく食べてくれる」と始めてもらったものの、3日もすると飼い主さんのほうが疲れてきます。
そうした料理は浸透しないことに気づき、その後は10分で作れるレシピに変えています。
冷凍して作り置きをしておくと便利です。
1〜2週間に1回、3種類の手作りごはんを作って1食ずつ冷凍しておきます。
解凍したあとはレンジで温めるかフライパンで焼くだけなので、調理の手間を大きく省けます。
理由3 食材の選び方に知識がいる
3つ目の理由は、食材の選び方に知識がいることです。
人にとって当たり前の食材のなかに、犬には与えてはいけないものがあるからです。
| 食材 | 理由の要旨 |
|---|---|
| タマネギ・ネギ・ニラ・ニンニク | 赤血球を破壊する成分を含み、加熱しても分解されない |
| チョコレート | テオブロミンが嘔吐や下痢、けいれんの原因になる |
| キシリトール入りのガムなど | 少量でも血糖値の低下や肝不全を引き起こす |
| 鶏の骨 | 割れるととがり、のどや消化管を傷つけることがある |
| 生の魚介類(いか、タコなど) | ビタミンB1を分解する酵素を持つものがある |
| ブドウ・干しブドウ | 腎不全の原因になる |
この一覧は、最低限の知識として押さえておいてください。
なかでもキシリトールは特に危険です。
過去のわんちゃんの多くの症例から導き出された食材だからです。
一方でキシリトール以外については、少量食べたからといってすぐに体調を崩すという緊急性はありません。
海外のフードメーカーには、ニンニクをドライフードの食材として用いているものもあります。
とはいえ、これらの食材を積極的に与えることは危険です。
絶対におやめください。
ポイント
3つの心配は、どれも正しい指摘です。
ただ、それは「毎食すべてを手作りにする」場合の話です。
この3つを理解したうえで総合栄養食にトッピングするだけなら、さほど心配はいりません。
愛犬の喜ぶ手作りごはん、ぜひトライしてみてください。
犬の手作りご飯とドッグフード、どちらかを選ぶ必要はない
検索の入り口でいちばん多いのが、手作りとドッグフードのどちらがいいのかという問いです。
この章では、その二者択一から降りるための考え方を2つの角度から説明します。
- 総合栄養食に「のせる」という第三の選択肢
- 料理教室でいちばん多い相談と、そのあとに起きたこと
どちらかに決めようとすると、決められないまま何も始まらない状態が続きます。
選ばずに始められる形を先に知っておくと、今日の一食から動けます。
第三の選択肢は総合栄養食に「のせる」こと
手作りとドッグフードは、どちらかを選ぶものではありません。
総合栄養食は栄養素をバランスよくとれますが、水分が約9%しかないという弱点があるからです。
わんちゃんが食べ飽きてしまうこともよくあります。
総合栄養食は、表示のルールで次のように定められた区分です。
毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの
たとえば、いつものドライフードを半分減らし、お肉のミンチを炒めてトッピングします。
炒めたフライパンに水を入れてスープにし、それも一緒にフードボウルへ。
こうすることで、新鮮なミンチ肉とスープが加わり、おいしい香りも広がります。
栄養設計を担うのは、あくまで総合栄養食のドライフードです。
土台を任せたまま、手作りの良さだけを足せます。
いちばん多い相談は「ドライフードを食べなくなった」
のせるだけで十分だと言えるのは、実際にそれで変わった例を見てきたからです。
料理教室と日々の相談でいちばん多いのは、ドライフードを食べなくなったという質問です。
手作りごはんをドライフードにトッピングする形にしたところ、よく食べてくれるようになったと伺います。
ここで起きているのは、ドライフードをやめるという変化ではありません。
ドライフードに何かを足したことで、また食べるようになったという変化です。
手作りかドッグフードかという問いは、この時点で意味を失います。
3つのやり方を並べると、違いがはっきりします。
| 比べる点 | 全部手作り | のせるだけ | ドライのみ |
|---|---|---|---|
| 栄養設計の責任 | 飼い主 | フード側 | フード側 |
| かかる時間 | 長い | 数分 | なし |
| 食いつきの変化 | 大きい | 大きい | 変化なし |
| 続けやすさ | 難しい | 易しい | 易しい |
教室では、割合の話としてお伝えしています。
手作りごはんを100%にすると栄養素が偏るので、ドライフードの総合栄養食を50%くらいは使ってください。
のせるだけを選ぶ理由は、手を抜くためではありません。
栄養バランスをフードに預けて、手作りの良い部分だけを飼い主さんが担当するためです。
まずはぬるま湯をかけるだけでいい
手作りご飯の第一歩として、包丁もまな板もいらない方法があります。
いつものドライフードに、ぬるま湯をかけるだけです。
この章では3つに分けて説明します。
- なぜぬるま湯なのか
- 温度と量の目安
- それでも食べてくれないときの次の一手
最初に手のかかるレシピから入ると、2回目以降は疲れてやめてしまう方がほとんどです。
道具のいらない方法から始めれば、今日の夕食から試せます。
なぜぬるま湯なのか
ぬるま湯を最初に置くのは、香りと水分を同時に足せるからです。
ドライフードは温度が上がると香りが立ちやすくなり、食事から水分もとれます。
たとえば、朝の支度で手が離せないときでも、器に湯を回しかけるだけで済みます。
用意する材料は0品で、刻む・煮る・冷ますという3工程もいりません。
香りと水分だけなら、今日の一食から足せます。
温度と量の目安
湯の温度は人肌程度、量はフードの底が軽くひたるくらいから始めます。
熱すぎると口の中をやけどする危険があり、多すぎると器の底に残るからです。
たとえば、沸かしたての湯をそのまま使わず、いったん別の器に移して冷まします。
手の甲に触れて熱いと感じない程度が目安です。
量は大さじ1杯から始めて、残す日が続くようなら半分に減らします。
食べきる量を探すほうが、最初から正解を当てにいくより近道です。
注意
湯やだしをかけたご飯は、乾いたままのフードより傷みやすくなります。
水分を足したごはんは、食器に出したあと20分程度を目安に片付けましょう。
食べ残しをそのままにせず、時間を決めて下げるようにしてください。
湯の代わりに、香りのあるだしを使う方法もあります。
京の一番だしは100gあたり14kcalで、カロリーをほとんど足さずに香りと水分を足せます。
主食のドライフードが100gあたり357kcalなので、その差は25倍ほどです。
京の一番だしを見てみるそれでも食べてくれないときの次の一手
ぬるま湯は万能ではありません。
ふやかすと味が薄まって、かえって食べてくれない場合もあるからです。
その場合に教室で伝えているのが、焼いた肉汁を使ったスープです。
教室では、次の3段階でお伝えしています。
- ぬるま湯でドライフードをふやかす
- 食べない場合は、肉か魚をフライパンで焼いてトッピングする
- フライパンに残った肉汁を水でのばし、焼いた肉か魚とスープをドライフードに合わせる
スープの詳しい作り方は、このあとのレシピ1品目にまとめてあります。
いきなり3段目から始めなくてかまいません。
1段目でうまくいけば、そこで止まっていいのです。
次の一歩は、肉・魚・野菜をのせること
ぬるま湯に慣れたら、次はのせる素材を1つ増やします。
この章では、素材ごとの考え方と量の決め方を4つに分けて説明します。
- 肉ミンチとささみ、どちらをのせるか
- 魚を焼いてのせる
- 茹でた野菜をのせる
- のせる量はどれくらいか
素材を増やすほど、何をどれだけのせるかで迷いやすくなります。
先に考え方を決めておけば、冷蔵庫にあるもので判断できます。
肉ミンチとささみ、どちらをのせるか
肉は、手に入るものを選んでかまいません。
スーパーのお肉のなかで最も安価で調理の手間もないのが、ミンチ肉だからです。
牛・豚・鶏の3種類が常時買いやすいと思います。
教室に来られる方の大半が選ぶのは、ゆでたささみにブロッコリーとトマトの組み合わせです。
そして「ささみっていいですよね」と聞かれます。
ささみが選ばれる理由は、たいてい脂質の少なさです。
文部科学省の食品成分データベースでは、ささみ(生)の脂質は100gあたり0.8gとされています。
むね肉の皮なし(生)でも1.9gなので、大きな差はありません。
ささみとむね肉のどちらがいいかという質問には、手に入るほうでかまわないとお答えしています。
教室では、脂質を減らすことを目的にしないようお伝えしています。
脂質は悪者ではなく、犬にとって必要な栄養素だからです。
ポイント
わんちゃんはボディービルダーではない。
脂質を落とすことが正解なら、いちばん脂の少ない素材を選び続けるのが最適になってしまいます。
そうではなく、必要な栄養素として脂質も入ってくる形にしてください。
そのうえで、ささみについていちばん多い4つの質問に答えます。
| 質問 | 回答 |
|---|---|
| 毎日与えていいか | 同じものを毎日は勧めていません |
| 1日に何本か | 本数の公的な基準は見あたりません |
| むね肉とどちらがいいか | 成分の差は小さく、手に入るほうでかまいません |
| 毎食与えていいか | 毎日と同じ考え方で、続けないほうがよいです |
同じものを毎日続けないのは、飽きてしまうからです。
加えて、同じたんぱく質ばかりをとりすぎると食物アレルギーになる可能性もあると考えられています。
たとえば、鶏肉を食べた翌日は白身魚に替えるだけで十分です。
魚を焼いてのせる
魚をのせるときの条件は1つだけで、必ず火を通すことです。
飼い主のためのペットフード・ガイドライン(環境省)は、生の魚介類について必ず加熱調理をして与えるよう示しています。
寄生虫や細菌による食中毒を防ぐためです。
骨は必ず取り除き、口に入る前に手で確かめます。
皮はコラーゲンを多く含むので、細かくして与えてください。
おすすめは、鱈、かつお、ぶり、鯵、いわし、サーモンなどです。
味付けの必要はなく、焼いたあとに残った汁を少量かけるだけで香りが立ちます。
茹でた野菜をのせる
野菜は、水分をとりやすくする素材として考えると使いやすくなります。
多くの野菜は重さの大半が水分で、カロリーが低いからです。
野菜は茹でて、食べやすい大きさにカットしてから与えます。
ホウレン草だけはおすすめしません。
野菜のなかでシュウ酸がもっとも多いからです。
近年、わんちゃんが結石になる症例が見られており、なかでも多いのがシュウ酸カルシウム結石だと言われています。
シュウ酸とカルシウムが結びついて結晶になり、それが集まったものが石です。
ブロッコリー、キャベツ、さつまいもなども、一度茹でてから与えることで水溶性のシュウ酸を減らせます。
のせる量はどれくらいか
のせる量は、体重ではなく主食との引き算で決めます。
体重別の給与量には、公的にも確かな基準が見あたらないからです。
いつもの主食を小さじ1杯ぶん減らし、同じくらいの量をのせます。
それで残さず食べきるようなら、しばらくその量で様子を見ます。
そのうえで、野菜をのせる量は全体の4分の1程度が目安です。
野菜の繊維質には、腸のなかの老廃物を押し流す働きがあると言われています。
善玉菌を増やして腸内環境を整える働きもあると考えられています。
食べ残す日が続くようであれば、いったん量を減らして様子を見てください。
教室では、手作りを100%にしないようお伝えしています。
手作りだけにすると栄養素が偏るので、半分は総合栄養食を与えることを勧めています。
数字を先に決めるより、目の前の器が空になるかどうかを基準にするほうが確かです。
犬の手作りご飯の簡単レシピ3品
ここからは、実際にのせるレシピを3品紹介します。
- 超簡単ミンチ炒め
- 鰤大根
- 親子丼
初心者の方でも作れるレシピで、どれも10分以内に終わります。
凝った料理を目指すと、2回目が来ないまま終わってしまいます。
超簡単ミンチ炒め
1品目は、料理に自信のない方でも作れるレシピです。
材料(小型犬1回分)
- ミンチ 50g(牛、豚、鶏などお好みで選んでください)
- 水 50ml
手順
- フライパンにミンチを入れて火を付け、中火で炒めます
- ミンチを入れたら焼き色が付くまで触らず我慢してください
- ミンチを両面焼いたらフードボウルに取り出し、フライパンに水を入れてスープを取ります
ミンチをしっかり焼くことで、肉の水分が蒸発し旨味が強くなります。
焼いたミンチと総合栄養食のドライフードを入れたフードボウルにスープをかけ、冷めたら与えてください。
いつも食べているドライフードの量は2分の1から3分の1程度にして様子を見てください。
下記の食品成分は文部科学省の食品成分データベースから引用しています。
| 食品成分 | エネルギー(kcal) | たんぱく質(g) | 脂質(g) | 重量(g) |
|---|---|---|---|---|
| うし/もも/脂身つき | 196 | 19.5 | 13.3 | 100 |
| ぶた/ロース/脂身つき | 248 | 19.3 | 19.2 | 100 |
| にわとり/むね/皮つき | 133 | 21.3 | 5.9 | 100 |
フライパンに残った肉汁を水でのばしスープにすると、ドライフードにも水が含まれてお腹に優しくなります。
鰤大根
2品目は、フライパンでつくる鰤大根です。
材料(小型犬2回分)
- ぶり 1切れ(食べやすい大きさにカットする)
- 大根 20g
- 水 50ml
- 油少々(オリーブオイルなど)
手順
- 大根を食べやすい大きさにカットして、湯に1〜2分入れて湯がきざるで取りおきます
- 中火で熱したフライパンに油をひと回しし、湯気が立ったところに鰤を入れます
- 1〜2分触らずに焼き目を付けてから返します
- 鰤が焼けたらフードボウルに取り出し、フライパンに水と大根を入れ煮立ったら出来上がりです
焼いたときに出た肉汁が、そのまま香りのもとになります。
鰤の皮面をしっかり焼くと、香ばしさが一層強くなります。
総合栄養食のドライフードを一緒にのせて、冷めたらお与えください。
親子丼
3品目は、鶏肉と卵で作るレシピです。
材料(小型犬1から2回分)
- 鶏肉 50g(牛や豚で他人丼になります)
- たまご 1個
- 水 50ml(あれば一番だし。昆布、かつお節)
- 油少々(オリーブオイルなど)
手順
- フライパンに油を回し入れ、鶏肉を食べやすい大きさにカットして中火で焼きます
- 水(一番だし)を入れて沸騰したら溶き卵を回し入れ、完成です
卵は栄養価の高い食材なので、積極的に使っていただきたい素材です。
総合栄養食のドライフードを一緒にのせて、冷めたらお与えください。
素材からそろえたい場合は、犬用 自分で作る手作りごはんのページに材料をまとめています。
犬の手作りご飯の作り置きと保存はどこまでできるのか
作り置きができるかどうかは、手作りご飯を続けられるかを大きく左右します。
この章では、保存を3つに分けて考えます。
- 冷蔵で何日もつのか
- 冷凍保存はどうか
- 小分けの仕方
根拠のない日数をうのみにすると、傷んだご飯を出してしまう危険があります。
分からない部分は分からないまま示すので、そのつもりで読んでください。
冷蔵で何日もつのか
冷蔵庫で2〜3日までとお伝えしています。
手作りご飯を冷蔵で何日もたせられるかについて、確立した基準は見あたらないからです。
たとえば飼い主のためのペットフード・ガイドライン(環境省)では、ドライフードの使用期限の目安が開封後約1か月とされています。
水分の多いウェットフードは、開封後1日が目安です。
同じガイドラインのなかでも水分が多いほど目安は短く、その差はおよそ30倍にひらきます。
手作りご飯は水分が多い側にあたるので、日もちする前提では考えないほうが安全です。
与える前には、必ず火を通し直してください。
沸騰するまで加熱すれば、中心温度75度で1分の加熱にあたります。
電子レンジなら500Wで2分が目安です。
この答えの根拠は、前職で京都府の食品衛生責任者の講習会を受講したことにあります。
公的な基準として犬の手作りご飯の日数が示されているわけではありません。
それでも、人の食品衛生の考え方はそのまま使えるはずです。
厚生労働省の家庭でできる食中毒予防の6つのポイントも、加熱の目安を中心部75度で1分間以上としています。
残った食品を温め直すときの目安も75度以上で、汁ものは沸騰するまで加熱するよう示されています。
冷蔵庫で2〜3日、与える前には必ず火を通し直す。
この2つをセットで守ってください。
冷凍保存はどうか
冷蔵で持てあますなら、冷凍のほうが扱いやすい方法です。
2〜3週間を目安に使い切りましょう。
小分けにし、使う分だけ解凍するのが使いやすいです。
解凍したものを再び凍らせるのは避けてください。
小分けの仕方
小分けは、1回にのせる量を単位にすると迷いません。
まとめて凍らせると、使うたびに全体を解凍することになるからです。
たとえば、製氷皿に小さじ1杯ずつ入れて凍らせると、1個が1回分になります。
凍ったらジッパー付きの袋に移し、日付を書いてから重ねてください。
1回分ずつなら、忙しい日でも器に出してレンジで2分ほどで解凍できます。
作り置きは量を増やすためではなく、手をかける日を減らすための工夫です。
味付けはしない。でも香りは足していい
手作りご飯で迷いやすいのが、味をつけるかどうかです。
結論から言うと、味付けはしません。
代わりに足すのが香りで、この章では2つに分けて説明します。
- なぜ味付けをしないのか
- 香りで食欲は変わる
人の感覚のまま味を足すと、犬にとっては負担の大きい食事になります。
香りに置きかえる考え方を持っておくと、食が細い日にも打つ手が残ります。
なぜ味付けをしないのか
犬のご飯に、人の料理のような味付けはいりません。
人用の醤油やみりん、酒などは犬に必要な調味料ではないからです。
50年ほど前は、ごはんに残り物と味噌汁をかける食事が主流でした。
当時の平均寿命は7年ほどだったと言われています。
生活環境の変化や動物病院の体制もあるため、一概には言えません。
それでも、食の影響は小さくなかったと思います。
人用のごはんは味が濃く、食べてはいけない食材も多く含まれています。
ドライフードができて平均寿命が伸びているのは、栄養バランスと動物性たんぱく質を取れるようになったことも大きな要因です。
香りで食欲は変わる
味を足せない代わりに使えるのが、香りです。
温度が上がると香りが立ち、食事の欲求が変わるからです。
料理教室では「いつもこんなに食べないのに、すごい勢いで食べてくれる」と言われることがあります。
たとえば、ドライフードにだしをかけただけで器に向かう速さが変わる子もいます。
だしを使うなら、昆布とかつお節だけのものを選んでください。
香りは味付けの代用ではなく、食べ始めるきっかけをつくる手段です。
チキンボーンブロスは、鶏骨と鶏肉だけを長時間炊いたスープです。
100gあたり111kcalで、京の一番だしより濃い香りとうまみが出ます。
チキンボーンブロスを見てみる作れない日は、市販のものに頼っていい
毎日作れない日があっても、手作りご飯をやめたことにはなりません。
続けている人ほど、作れない日の受け皿を先に用意しているからです。
わが家では2021年10月以降、水分量の多いごはんにすべて切り替えました。
当初は猫だけだったこともあり、原材料の好みが分かれて苦労しました。
水分の多い食事に変えるだけでも、好みが分かれて手間取ることがあるのです。
だからこそ、作れない日に頼れるものを決めておく意味があります。
商品の説明にも、その前提がそのまま書かれています。
- おかず系の4品:1袋を1〜6回に分けて、総合栄養食と一緒にお与えください
- プレミアム料理の3品:総合栄養食に混ぜてお与えいただくと、食事から水分をとれます
たとえば、帰りが遅くなった日は、いつもの主食に1袋を分けてのせるだけで済みます。
手作りを休んでも、食事の形は変わりません。
教室を始めたころに凝った料理を作っていたのも、続かない形だったからです。
作る側でさえ、続く形に変えなければ続きませんでした。
作れない日に市販のものへ頼ることは、後退ではありません。
作れない日に頼れるウェットフードを見てみるよくある質問
最後に、検索でよく出てくる質問に5つ答えます。
- 白米・回数・子犬についての疑問
- 長生きとの関係
- 手作りだけにした場合のこと
ここを読まずに始めると、途中で不安になって手が止まりがちです。
白米は毎日与えても大丈夫ですか
白米は、飼い主のためのペットフード・ガイドライン(環境省)が挙げる与えてはいけない食材には入っていません。
ただ、白米を足した分だけ総合栄養食の割合は下がります。
教室では、同じものを毎日続けないようにお伝えしています。
白米だけを毎日足すのではなく、日によって野菜や芋に入れ替えてください。
犬の手作りご飯は1日に何回に分ければいいですか
回数は、これまでの食事の回数を変えないことが基本です。
総合栄養食のドライフードにのせるだけなら、いまの回数のままで足せます。
通常は朝晩の2回が目安です。
1回で満足する子もいますし、子犬なら3〜4回に分けて与えることもあります。
子犬に手作りご飯を与えてもいいですか
子犬については、意見が真っ二つに分かれたままです。
生後半年からほぼ手作りにしているという声もあれば、成長期は専用の総合栄養食だけがよいという声もあります。
どちらが正しいかを、この記事で決めることはしません。
成長期は必要量が大きく変わる時期なので、動物性たんぱく質を多く取る必要があります。
迷う場合は、かかりつけの獣医師に確認するのが確実です。
手作りご飯にすると長生きしますか
手作りご飯で寿命が延びるかどうかは、確かめられていません。
比べるための研究や公的なデータが見あたらないからです。
マンマボーノの食事の考え方を実践してくれている飼い主さんからは、体調が変わったというお声をいただいています。
手作りごはん100%ではなく、総合栄養食と手作りごはんの組み合わせで、栄養素と水分の両方をとることを大切にしています。
手作りご飯だけを与えるとどうなりますか
すべてを手作りにすると、栄養設計の責任が飼い主さんに移ります。
この記事の最初の章で挙げた3つの心配が、そのまま当てはまってしまうのです。
教室では、栄養素が偏るため総合栄養食を50%くらいは残すようお伝えしています。
のせるだけにとどめておけば、土台はフード側に残ったままです。
まとめ
犬の手作りご飯は、全部を手作りにしなくても始められます。
- 「よくない」と言われる3つの心配は、毎食すべてを手作りにする場合の話
- 総合栄養食にのせる形なら、栄養設計の責任はフード側に残る
- 今日できるのは、いつもの一食にぬるま湯をかけること
- ふやかして食べないときは、焼いた肉汁でスープを作って合わせる
- 慣れてきたら、総合栄養食を50%くらいは残す
- 同じ素材を毎日続けず、日によって入れ替える
- のせてはいけない食材は、環境省のガイドラインの一覧で先に外しておく
- 作り置きは冷蔵庫で2〜3日。与える前に必ず火を通し直す
- 作れない日は、市販のものに頼っていい
手作りかドッグフードかで悩む必要は、はじめからありませんでした。
いつもの器に何を足すかだけを決めれば、それで十分です。
まずは今夜、ぬるま湯を大さじ1杯かけるところから始めてみてください。


